2011年4月4日月曜日

『経営パワーの危機』(三枝 匡)

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『V字回復の経営』から期間は開きましたが、『経営パワーの危機』(著:三枝 匡)を読んだので軽く感想をまとめておきます。

あらすじとしては、新日本工業という大企業の一ミドルであった伊達陽介が倒産寸前の投資先企業、東洋アストロンに単身で乗り込んで企業の再建にあたるといったストーリーです。

前作である『V字回復の経営』『戦略プロフェッショナル』との違いは、一ミドルマネジャーであった伊達が経営者として成長していく過程にスポットがあてられている点です。

例えば

  • 冒頭の新日本工業社長、財津とのミーティングでの場面(生意気なミドルという感じ)
  • 東洋アストロン前社長、町田祐造のベンチャー企業経営者としての光と影
  • 財津(親会社社長)伊達(現社長)町田(技術・開発部門のキーパーソンかつ元社長)の微妙なパワーバランス
  • 親会社人事で送られてきた営業部長、明石との内紛
などなどです。前2作における主人公の上司というのは快きスポンサーであったのに対し、『経営パワーの危機』における上司、財津は父親のような存在で、積極的に物語に介入し、最終的には伊達の拡大戦略に対し雷を落とし、強く諌める役を勤めています。

加えて、東洋アストロンを倒産寸前まで陥らせた創業者兼前社長の町田が会社に残り、開発の要として伊達と共に仕事をするという微妙な人間関係が後々の内紛の種になるというのも、この本ならではのシチュエーションとなっています。

全体的に感じたことは、前2作と違って、「一筋縄ではいかない経営」というのを強く感じました。『V字~』のように危機感のない状態から喚起して、という段階ではなくこちらではもう倒産寸前土下座状態からのスタートですので、規模を縮小すればいいという話ではないし、画期的な新製品も、ゼロからのスタートで出てくるにはかなりの紆余曲折があります。経営陣は政治的な暗闘が続く、この様な中で、主人公の伊達は救世主として華々しく、ではなく悩み苦しみながら一つ一つ解決し、最後は天狗になります。そう考えながら読んでいくと、ほんの少しもやもやが残る本です。いや、すっきりとしない読後感の方が問題提起としては良いんですけどね。

要するに、著者の文才が上がったのでは…と思います。

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