2011年3月25日金曜日

『Me2.0』(ダン・ショーベル)

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今回は『Me2.0』(ダン・ショーベル)を取り上げます。
この本のメインテーマはパーソナルブランディングとなっております。どういうことかというと、
パーソナルブランディングの定義:「パーソナルブランディングとは、個人や起業家がプロフェッショナルとして、または個人として、自分のバリューポジション(自分ブランドが相手に提供できる価値)を明確にし、それをはっきりと伝えることで自分を差別化し、集団から抜きんでるプロセスであり、具体的な目標を達成するために、そのプロポジションを一貫性のあるメッセージとイメージを使って、複数のプラットフォームで展開することである。(以下省略)(p.24)
 などというようにこの本では定義されていますが、もっと単刀直入に言った「自分を会社に見立てる」という例えがその後に書かれており、それが最も自分にはしっくりきました。でも、「ブランディング」なんて付いている時点で分かるように、マーケティング寄りの話です。

この本で中心となるのが思い通りのキャリアを作るための4ステップで、具体的にFacebook,Linkdedin,twitter,flickrなどのソーシャルネットワークツールやSWOT分析、マーケティングの4Pなどの手法をを絡めながら

  1. 自分ブランドを見つける
  2. 自分ブランドを作る
  3. 自分ブランドを伝える
  4. 自分ブランドを管理する

という4ステップで解説しています。特に、ブログ戦略(ブログの書き方、育て方)の項はかなり具体的にまとめられており、良い参考になりました。

ただ全体的気になったのは、著者の大学時代や就職活動期のエピソードが多いのでどちらかというとそちら向きな面もあるという点です。始めから自分のテーマをニッチに設定しパーソナルブランディングを行うというのはまさにスタートアップベンチャーの戦略そのものだと思います。

全体の感想としては、パーソナルブランディングは今まさに取り組まなければならないということを実感しました。パーソナルブランディングでライトが当たるのは今まであまり見かけなかったセグメントで活躍している人や、ウェブ以外の現実で活躍していたが、露出が少なかった人で、そういった方々にスポットライトが当たるのは新たな知見を得る、物語を知る良い機会になります。
ただし、Facebookの、リアル・web両面をそのままネットに持ち込み、パーソナリティーを一元化するというところには、私はまだまだ至っていないような実感があります。むしろ、ブログ→twitter→Facebook→mixiのような形で、個人の本音や意見がマトリョーシカ(次第に小さくなっていくロシア人形)式に狭まっているように思います。パーソナルブランディングは、その部分に一貫性を持たせなければいけないので、少なくとも私はまだ出来ていませんね。
日々精進です。

2011年3月17日木曜日

『V字回復の経営』(三枝 匡)

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さて、ブログの方は通常更新をしていきます。今回取り上げるのは2001年に発売された、三枝匡さんの『V字回復の経営』です。

この本は三枝さんの関わった5社の事業再建を元にかかれた小説形式の本です。翌年に発表された『戦略プロフェッショナル』の方はプロダクト・ライフサイクルやプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(略してPPM)などの経営戦略を散りばめた内容にたいしてこちらはとことん人間臭い部分にフォーカスされた内容となっています。

要点

  • 上層部、開発、営業とどの部署にも被害者意識が蔓延っており、自身の責任を有耶無耶にしている。
  • 戦略に基づいた経営がなされておらず、「選択と集中」が十分になされていない。
  • 機能別組織→創って、作って、売る(研究開発→生産→販売)ための分権化
  • 改革の推進・抵抗パターン
この中でも特に注目して読んだのが改革の推進・抵抗パターンの分類です。まとめるとざっとこのような形になります。

  • A改革先導者(イノベーター)
  1. A1過激改革型
  2. A2実力推進型
  3. A3積極行動型
  4. A4積極思索型
  • B改革追随者(フォロワー)
  1. B1心情賛成型
  2. B2中立型
  3. B3心情抵抗型
  • C改革抵抗者(アンチ)
  1. C1確信抵抗型
  2. C2過激抵抗型
  • D人事更迭者(淡々型、抵抗型)
  • E外野傍観型(上位関係型、完全外野型)
列挙してみましたが、企業改革において、社内の人間はこのように分かれるようです。ええ、多いと思います。個人的には2:8の法則ぐらい簡潔だと粗すぎるので2:6:2の法則ぐらいがいいのかなと思いますが、実際の改革においてはこの分類通り明らかな違いがあるのでしょう。

『V字改革の経営』ではこれらの分類を登場人物一人ひとりにあてはめて詳細に解説しているところが肝です。それがなければフレームワークとしてはやはり分類過剰のような気がします。

ベストセラーになった本らしいですが、正直なところ私は経営学部を出なければ一生興味を持たない範囲の本だったと思います。実際読んでみても「へぇー」としか思わないでしょう。
ただし、リーダーとして責任を背負って改革に取り組んでみたいという人には良書です。モチベーションの維持にも役立つものだと思います。その他の著書『経営パワーの危機』も後日読んでみるつもりです。

2011年3月16日水曜日

東北地方太平洋沖地震について

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3月11日午後2時46分ごろ、東北地方太平洋沖地震が発生しました。
その時、僕は関東にいて、駅から自宅まで徒歩で帰宅することになったこと意外大きな被害はありませんでしたが、実家が宮城県にあり、両親、親戚や友人が被災者となりました。
幸い内陸部だったため、無事との連絡がつき一安心しましたが、もし沿岸部に住んでいたらと思うととても他人事のようには思えないものでした。

亡くなった方のご冥福をお祈りします。一刻も早い復興を心より願っております。

2011年3月9日水曜日

『発光地帯』(川上未映子)

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川上未映子さんの作品に関しては『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が早稲田文学に出たときに大学の図書館でこっそり読んでいた思い出があるような古参読者だったわけですが。この『発光地帯』もおめおめ買ってしまいました。なので特に秀逸だなあと思ったエッセイをピックアップ。

  • 世はすべてこともなし
  • 世界なんてわたしとあなたでやめればいい
  • きっと彼らは誰かの息子
一冊を通してのテーマが「食」に関するものらしいですが、そんなことどうだっていい。一番は「世界なんてわたしとあなたでやめればいい」です。前作の『ヘヴン』を読んだ方なら、どこか通じているような内容ですが、なにより、コピーがいい。「やめればいい」って。どうしたらそんなコピーが出るんだろう。後は色々な方々との交流のようすとか、「お母さん」ものが多いエッセイ集です。
ものすごく専門的で有名なもの(ex.陰翳礼賛)でなければ作家のエッセイはごく少数の固定ファンしか読まないようなイメージがありますので、エッセイの紹介なんて本来しなくてもいい気がします。特に現代文学作家さんのエッセイって多くは小説が書けない云々だとか、ごくごく普通の日常とか、ブログに書けやとかいう物が個人的には多いような気がします。
ただ、一人の作家さんの小説やエッセイをリアルタイムで読んでいくと、次の題材はこんな感じかなとエッセイを読みながら予測立てられるのですよ。それを、次の作品で軽々と予測を超える瞬間というのかな。知る人ぞ知る感動です。それがあるから一続きで読もうと思うんですよね。
特に川上さんは『乳と卵』から『ヘヴン』への躍進が凄かったので、特にそう思います。次?予測つきませんね。全く。

Threw away the clock. But my body didn't become free.

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2011年3月4日金曜日

『パラノイドパーク』(ガス・ヴァン・サント監督作)

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これまた最近見た映画をピックアップしていきます。ガス・ヴァン・サント監督の『パラノイドパーク』についてちょっと感想みたいなものを書きます。
僕はあまり監督やキャストで観る映画決めるタイプではなく、タイトル(映画.comで気になったやつ)とテーマをさっと見て決めてしまうタイプで、ガス・ヴァン・サント監督の作品に関しては『グッド・ウィル・ハンティング』と、『ラストデイズ』しか観ていなかったのですが、なんとなく『グッド・ウィル・ハンティング』よりは『ラストデイズ』に近い趣がありますね。

この作品は要するに少年がふとしたことから人を殺してしまう話なのですが、正直なところ、ネタバレするしない以前に、ストーリーについて語るのは野暮な気がします。気持ちのいいぐらい、これだけです。ストーリーよか、時系列を前後しながら、時々入る自主制作調の荒い映像やスロー映像だったり、楽曲だったりと、まあ抽象的ですが、映像の中で観るべきものは全部見れるし感じ取れます。あと台詞喋る声小さい。これも演出でしょう。僕は好きです。

なんというのだろうかな、物語の筋書きを最小限のシンプルな形にまとめて、視点を色々変えて複雑な心理描写をしているというような映画なのかな。ボリュームより俯瞰。祭りの夜店を見て屋台なにがあるかとか食べるかよりも雰囲気を味わいたいような。これは違うか。

観た後でちょっと調べてみたところ、この作品は同監督の『エレファント』と対にして観るのが良いらしいですね。今度チェックしてみます。叙情的な作品を求めている方にはおすすめなので、ぜひ。

2011年3月3日木曜日

『組織行動論の実学 心理学で経営課題を解明する』(著、編集:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部)レビュー

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最近読み終えた本について、こつこつ書評を書いていこうと思います。
第一冊目が『組織行動論の実学 心理学で経営課題を解明する』(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー)というビジネス書です。

この本は経営課題の中でも組織で働く人々の行動や態度といった部分を組織行動学、社会心理学視点からハーバード・ビジネス・レビューに寄稿された論文をまとめた本です。
私が気になったキーワードとしては、

  • 「組織の構成員から見られる7つの組織像(特に受動攻撃性)」
  • 「転移」
  • 「神経症的インポスター(詐欺師)」
「組織の構成員から見られる7つの組織像」は「健全な組織」「不健全な組織」という2つのカテゴリに分けられた説明が円グラフ型の図表になっています(p.5)
この本の第一章では特に「受動攻撃型」組織(一見穏やかだが、あらゆる手を使って組織に公然と反発する勢力。この組織の力が強いと、一旦決まったはずの計画がなかなか進展しないような状況になりやすい。)について多くページを割いていますが、その他の組織像についても、自分の所属している組織がどの形に近いのか自己診断する手助けになるかと思います。

次に気になった「転移」というのは第9章に書かれています。私は心理学に関しては門外漢で「転移」とは何ぞや?ぐらいの知識でしたが、要約するとリーダーについていくフォロワーはリーダーに対してどのような感情を抱くかという話で、リーダーを肉親と重ね合わせて感情を移してしまうということには純粋にそうなの?と思いました。無意識とはいえ、リーダーを父親や母親に重ね合わせて見ているなんてぞっとします。(僕が一線引くタイプだからかも)「お国柄で異なる転移」もなかなか興味深いです。

第10章の「神経症的インポスター」は要約すると「卑屈な完璧主義者」で、高い成果や業績を上げているにもかかわらず、その成果を「まがいもの」と思い込み、自分で自分の成果を認められないという症状らしいです。完璧主義といえば、日本人のお得意技のようなところで、日経ビジネスassocie(2月15日号)にも「完璧グセ」と紹介されていましたが、いい心がけだがやりすぎ厳禁な主義で、これが極端になりすぎると「神経症的インポスター」になってしまうと思うと、わが身を振り返ってみないといつこうなってるか分からないのでぞっとしました。

この書評では自分の気になったところを少し紹介などしてみましたが、何かしらの組織内にいる人なら多かれ少なかれ経験したことがある方には、ま新しさはないです。大体2007年に出た本ですので、今はもっと新しい論文が出ていてもおかしくないと思います。
しかし、何らかのフレームワークを得たいと思う方には良本だと思います。あと読みやすいです。高いけど。